「新川和江詩集」(新川和江)

「詩集」はいかがですか?

「新川和江詩集」
(新川和江)ハルキ文庫

かつて自分の受け持つ学年の生徒に
読書指導をしていたときのことです。
中学校1年生80名を前に、
「君たちの中で詩集の本を持っている人、
手をあげて。」
し~ん(0人)。
「それじゃあ、今まで詩集を
読んだことのある人、手をあげて。」
し~ん(3人手を上げる)。
そうなのです。
小中学生にとって、本の世界は
小説やライトノベル以外のジャンルは
ほとんど未開拓分野なのです。

できれば子どもたちが
義務教育を終える前に、
主要な文学作品および詩集、
短歌・俳句集、古典、評論・随筆、戯曲等、
読書のレパートリーを
広げてあげたいと私は考えます。

その中でもまず詩集です。
詩集こそぜひ自分の本棚に
2~3冊でいいから
置くことを勧めています。
気が向いたときに一部を
読み返すだけでいいのです。
その都度、新たな発見と
新鮮な感動が得られるはずです。

私の本棚の特等席を占めているのは、
茨木のり子と谷川俊太郎の
2人の詩人です。
前者は行間から
ビンタが飛んでくるのを感じ、
読むたびに背筋を伸ばしています。
また、後者は毒を含んだ言葉の
中毒にならないように、
気を付けながら読んでいます。
でも、この2人は、中学校1年生には
少々難解かつ
刺激が強すぎるかもしれません。

そこで新川和江
(「わたしを束ねないで」
「名づけられた葉」などが有名です)を
薦めたいのです。

まず、彼女の詩には難しい表現や
技法が比較的少なく、
中学生でも情景を
思い浮かべやすいという点が
理由の一つです。
中学生の場合、
表現技法の難易度が上がると、
単に読み流しただけで、
詩を味わう段階まで
到達しないことがあるからです。

次に、彼女の詩集全体には、
「子どもを見守る母の視点」と、
「社会に強く生きようとする
一人の人間としての視点」の両方が、
適度に現れてくるという点です。
このことによって、
中学生が共感できる部分が
広がっていると思うのです。

この新川和江や金子みすゞの
詩集からスタートして、
萩原朔太郎や中原中也のあたりまで
達することができれば
しめたものです。

さあ、私たち大人も、
表紙が擦り切れるほど読みこなした、
とっておきの詩集を一冊、
持ってみませんか。 

(2018.9.4)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA